トーハクによってから、能楽師さんのトークイベントに参加してきました。
能装束のデザインや歴史を紐解く話から最先端の情報を聞くことができて楽しかったです。
また、当たり前のように刀剣乱舞の話題が出てきて思わずニヤリ。
今回はそのレポートです。
一言レポート
今日はトーハク安土桃山時代の能装束も見れた。それだけじゃなくて、講演で能楽師さんの話聞けて楽しすぎて情報で頭いっぱい。今までの勉強の集大成ですごかった。
— ないな (@poponainai) March 4, 2016
能楽師さんは刀剣乱舞きっかけで能楽見てるの知ってるぞ!!!
まとめ
- 文化の継承の視点から新しい試みや次世代の能楽の方向性を聞けて応援したい気持ちになった
- 能装束の意味とその歴史を紐解きながらサブカルチャーに理解のあるお話がたくさん聞けた
- 今回の主催者さまのグッズのツチグモトートバックを買った
温古創新 ― 古きに学び新しきを創る 能楽に見るデザイン、狂言に見るデザイン
トークイベントのテーマは「能装束におけるデザインとは?」
— スペースオフィス (@ofispace) March 2, 2016
お話をしてくださるのは能楽師・宝生和英さんとアートディレクター・グラフィックデザイナーの川口貴弘さんです。
ご予約はまだまだ受付中です!
3/4(金)19:30〜
会場:西麻布 KREI SALON
料金:¥1500
たまたまTwitterのタイムラインで知ったのですが、タイトルにひかれました。
おや、これはおもしろいイベントなのでは?と思い、行くことを決めました。
その日はトーハクで童子切安綱と珍しい安土桃山時代の能装束の展示期間で見に行く予定で、
そのまま本イベントの予習になったのでした。
宝生流二十世宗家 宝生 和英
本イベントのスピーカーをつとめた若き宗家の能楽師のかた。
イベント後に知ったのですが、このサイトでの活動情報のとおりで
能楽の世界を広げるために体験学習やアーティストさんとのコラボ活動を実施しているようです。
このかたの話が大変おもしろかった。
当日
トーハク行って、会場へ。
会場は根津美術館から徒歩10分ほどの場所にあったので駅から少し歩きましたね。
トーハクで童子切安綱を堪能
この一週間後には、もう一回見に行くんですけどね。
どれだけ好きなんだ。
トーハクで童子切安綱見てきたけど、北野天満宮で髭切を見たとき同じ感想抱いた。力強い。あと、短剣じゃなくて刀の正宗見れたのよかった。のたれ美しくてもう。 pic.twitter.com/wMELJjqENh
— ないな (@poponainai) March 4, 2016
安土桃山時代の能装束
ずっと見たいなーとつぶやいていたのですが、ようやく見に行くことができました。
展示リストより、唐織 白地枝垂桜模様がお気に入りです。
この時代の能装束は輸入物だったり、アレンジだったり派手だったり法則なしの形無しみたいですね。
唐織 白地枝垂桜模様
- キャプションより
トーハク満喫後にイベント会場へ
これが予習となってイベント会場の話で知識が少し入った状態で聞くことができたのでした
co-lab
流行のコワーキングスペースのようなところでオシャレな場所でした。
そこで濃密な休憩無しの3時間。
頭の糖分が足りないんじゃないかと思うほど詰め込みで能楽の最先端の情報を聞くことができました。
レポート
- ここからは、私がお話を聞いて印象に残ったことをメモし文字におこしてまとめたものです。
- 散文情報ですが、トークイベントなので勉強がてら講演後に情報を書き足しています。
- 構成は、司会者がスライドの能装束を見ながらの掛け合い。その後、テーマにそってお話です。時系列。
文化の継承がテーマ
- 司会は国立能楽堂の亀川さん(イベントなのでプライベート活動)
- 能の世界が広がるといいとのことです
- 宝生さん
- 川口さん
能装束のスライドをもとにお話
- 能装束
- 衣装じゃない。装束。
- 現代で忘れられている
- 新しい時代の能装束から安土桃山にさかのぼって解説
コスプレの先駆けはお能?
- 司会より
- コスプレ:なりたい人物になりたい
- 能は、さらに深く、その人物になる。ということ。
- 面、かつらを身につけて、その人物そのものを目指している
- 装束はそのつもりで見てね。
定番は吉祥文様(きっしょうもんよう)
- 能装束の特徴の話
- 魔力ある
- 竹:まっすぐのびる。一年中緑
- 松:はっぱが落ちない。
- 梅:寒い2月に一番に花を咲かせる。新春の到来。
- 卍:神様の胸毛のつむじ?が由来とか。ヒンズー教の
- ホラ貝:山伏の象徴
- 魔除けで吹く。熊とか化け物よけ。山に入るとき。
- 江戸前後の特徴。模様を多く使う。
- 象徴的
- 石畳、市松模様とかも。
- 青海波(せいがい)の波の模様。イタリアでも、同じ意味合いのものが。
- ゴシック時代から生まれ出た美術
- シルクロード由来?
- 鳳凰(ほうおう)
- 鳳(ほう)がオス。凰(おう)がメス。
- 桐の木に住む伝説。
- 天皇とか高貴なかたを表すのに着せる
昔は強い意味に、悪 という字を使っていた
- 登場人物がどういう役かわかるようにつくっている
- 当時見ている人も神様だって、鳳凰と桐でみんなわかる
「紅地雪輪福寿草文筆模様唐織」弘化3年(1846年) 前田家伝来
- (べにじ ゆきわ ふくじゅそう ふみふで もよう からおり)
- 参考画像(PDF)
- ふではじまる7つ模様をかたどった能装束。斬新。
- 意味合いを深く込める装束は細かい
- 能楽師さんの視点だと現在はこの手の装束は使われていないそうな
- あまりにも写実的すぎると使われない
- ふ の内訳
- 舟、縁雪(雪輪模様)、文、筆、藤袴、深見草(牡丹)、福寿草
- 参考情報:サントリー美術館さんの展示レポートより
19世紀の能装束のお話まだまだ
- 八つ橋
- 唐塗
- ストーリーがわかりやすくなっている
- 源氏物語の源氏公とか
- 今は、たくさん作られないので、汎用性が重視されている。
- 浅葱(あさぎ)
- やなぎ ... 邪気をはく。水をあらわす。
- やなぎは、生と死の境界
- 演目:隅田川をあらわすことも。
- 橋。あの世とこの世の境。川は、結界だったから。
文化と水の深い関係
- スピーカーより。奈良の桜井市でうまれた
- 寺川という小さい川がある。
- 文化がうまれるには、水が必要である。
- うたの歴史は農耕作業の効率化でリズムとるために生まれた
- 食物が育たない。水がいる。文化を発展するには水ありき。
- 三大文明とかまさに。
- はじまりの象徴。
格子模様
- こうし。地味なイメージ
- 当時はハイカラ
- 八丈島の八丈島 織物 参考:黄八丈の織り
- 南蛮船で海外との交流も多かった。
- 格子柄が残っている。海外の影響を受けている。
- 能では、老いた神様につかわれる。老人役にとか。
- 能楽が最先端のデザインをとりいれていた
紅地白鷺太藺模様縫箔
- (べにじ しろさぎ ふといもよう ぬいはく)
- 江戸物。安政五年(1858)。
- 司会者さんが国立能楽堂で一番好きだそうな
- ... 3月27日まで展示しているよ 企画展「近世大名家の能楽」 | 独立行政法人 日本芸術文化振興会
- (実は私はこの展示をすでに見に行っており、図録も手元にあるのであった)
- 手縫い。ボリュームがある。あたたかみがある。
- 白
- 鷺(さぎ)。神聖視
- お能の中でも特徴的。10歳の子供か、60歳以上しか演じることができない。
- 一番天に近い存在といわれている
- 他のは紋様
- 白鷺。職人さんの魂がのっている。これだけできんぞ、ってのをつくっている。
- 刺繍物が一番魅せられる
- 今は型紙のとおりに織機で
18世紀
- うろこ模様
- へび
- 脱皮。死の再生。弁財天。
- そのうろこもようをさずける
- 龍は、蛇と同一視される
- 魔除け
- 有名な安珍と清姫伝説にも出てくる蛇
- 鬼と同一視
- 力強いエネルギー
デザインはつきつめるとシンプルになる
- 三角の集合体は今でも通じる
- シンプルを極めている
- 赤字に金は栄える
- 装束より、当時の人はそれを知っていた
- 白の上に金を置いても光らない(マットになる)
- 今の合成の金ではそんなことないが、金泥からとっていたから。
- 同様に、青の上には銀が定番
模様:牛車の車
- 半分、水につかってたりする。
- 木製。木製はしばらく水につけない背景。これを模様にしている。
- 丈夫なしいの木を使っていた。
- 雑談より。金沢にしいのき迎賓館があるよね
- 演目:通小町(かよいこまち) で使われる装束。
- 時代を反映している。つまり、それは最先端。
続けて模様について
- 菊
- めでたい
- 演目:枕慈童(まくらじどう) ... 宝生流なら
- 中国物は、不老長寿のテーマが好き
- 丁子の実
- スパイス。香辛料。大事なので模様になるということは験担ぎ。
- 当時の風俗とかわかる
- (刀剣にもあるよなー)
- 巴(ともえ)
- 太鼓模様。三つの魂がぐるぐるしている
- 弓の弦を引くときの鞆(とも)を図案化したもの
- wikipediaくわしい
- 桐
- 桐は神様を表す
- 権力の象徴
- 雪持ち
- 椿 ... マイナスのイメージ。儚いという意味も。
- 冬の厳しい季節に咲く花はいい、力強いというのがこめられる
- 演目:道成寺の家元しか使われない
- 講演でのエピソード:梅若さんの要請で、宝生流が復活したときに渡す話があったそうな
- なぜ、道明寺に使うの?というなぜの意味はないそうな
- 家元専用は大名からもらって、大事にしてたんじゃない?とも。
- 尾長鶏(おながどり)
能楽が一番盛んだったのが江戸時代初期
- 装束をよく見ると袖が短い
- 手首が隠れる長さだった時代よりさかのぼるとこの時代は袖口が短いのが特徴
17世紀
- 水犀(すいさい)
- 霊獣。水の守り。
- 体が鹿。背中に亀の甲羅。
- (北野天満宮で同彫り物を見ることができるそうですね。参考。)
- 黎明期
- フォーマットが決まっていない
- 需要より、どれだけ縫えるかの技術論
- 糸の種類も豊富。縁取りをしている。3年で1両/1領
- 一つの物を作るのに一世一代。だからできがいい。
桃山時代
- のどかになる
- 風景とか
- 安土時代
- 大名らのパトロンの公募があった
- 今、資料は余り残っていない
- 問屋制が現代も残っている
- 当時のデザイン
- 誉れ
- トップの親方がアートディレクターのようにとりしまる
- 中国のものを買ってきて、紡いだ物もある
- 蝶
- 死んだ人の蘇り
- 霊力があると思われていた
- 紋様として使われる。さなぎから産まれることが死んだあとの蘇りの意。
- 装束ありき
- これがあれば、これを使おう
- この演目のためにこの装束、というわけではない
- この時代は手探り
- 面も180度違うものをつくったりしていた
- 着ることをメインに考えていない?
- 着るというより、刺繍の能力を見せたいが強そう
- 現代のほうが、定式化。ルールかしており、それはしばりでもある
- 新しい感性を封殺するネガティブな側面もある
装束のデザイン性について
- 背中やぶれたら背中のパーツをかえよう
- 設計図はあれども、分割前提。
- 広げたときの配置がうまい
- 謡 ... 田植えのリズム用。能率あげるのに。
- そして、祈祷となる
イノベーションの歴史
- 文化になり権力の象徴になったりする
- エンタメを求められた時代もあった。それがすべてじゃなかったのに。
- 戦国時代は、明日死んでもということで、死者を演じる意味で能楽を
- 文化革命
本テーマ:温故知新 -> 温古創新
- 我々の方向性をはっきりと出していけないといけない
- デザインの素材になるという手もある
- その技術をアパレルに転化するとか
装束をつくる技術
- ただ、いいものを作って、人のためより自分のために出したい
- 今の装束は、問屋制度の問題
- オーダーされたものだけをつくる。納期までにつくる。
- 折り技術じゃなくて、作業になる。それが問題になる
- 今、ミシンかパソコンでつくる
- 書いても売り手も 安くさげる努力を互いにしてしまっている
- それは、現場にとっては妥協
- デザイナー
- ザイナーの決定者は、第三者である
- 決定権が自分であれば、それはアーティストである
大名がパトロンだった責任感
- 好み。主観。
- コンペをやる。自分が選んだ責任を持つ
- 責任がどこにあるか、はっきりしていた。
- 大名は参勤交代で金ないので、商人が台頭した時代もあった。その場合は商人がパトロン。
- 一人がトップという仕組みは権力さえ間違わなければ最も効率的
- 民主的と権力と責任について
- ポリネシアの第三者システムの話
- 家元制度
- 宗家が各流儀に一人立つ
能装束の織機は戦後全部燃えたので
- 海外でつくったやつを今日は披露します(写真OK)
- 型紙は実現できている
- 戦火で技術の断絶があったことを知る
江戸時代の物が使えなくなってきた
- 酸性の触媒
- 化学反応でとかしてしまう。
- セリシン。タンパクな絹糸は溶けちゃう
- 色の濃い物から溶けていく
- 古い物はすっぱいニオイがする
- 近代は、 うつし をつかっている。
- 問屋がとりしきり
- 直接デザイナにいくわけにはいかない
- そのパターンでOKもいるにはいる
演目:羽衣オランダ天女説
- ダビンチを画像に使った衣装という話も聞いたことがある
- つまり、決まった模様だけじゃなくて変わった物をというデザインの可能性はある
サブカル話
トップと責任の話
- あの東京オリンピックのエンブレムの話
- 決定者が誰?という話 ... 東京だと8人。全体で110数人のすごくオープンな環境だったのに
- 長野オリンピックのときは一人しかやってない
- 一般の人が誰が責任をとるのか?
- 集団心理はたらく。ネットの利用した発言。あしかせになることもある。
- 誰かが責任をとれる立場にある
- 辞任じゃない任務の全うさ
- 誰にでもわかるように、方針をみせないといけない。
- 自分がなんのためにこれをやるのか。というのを見せる。
- トップの人間には責務がある
能楽と初心者について
- 能楽の欠点 ... 宗家のかたより熱いお話
- ハコに問題あり。初心者向き?とはなにか
- 初心者向きにやっても、初心者はこない
- 初心者がくるきっかけはたまたま
- 子供達向けってのをしたくない
- セルリアンタワーの能楽堂の小鍛治になぜ若い女性が?
- 刀剣乱舞を知る
- 自分でブームつくりたい
- ブームにのっかりたいじゃなくて
きっかけづくりを大事にしたい
能の神髄?演者でもわからん
- 神髄なんてのは!
- 古典、歴史にひかれたんじゃない
- 安住するところがないのが一番楽しいところだよ
- 歴史的には御上が文化ってのをないがしろにしてきた。だいたい戦争しているとき。
- 文化の提唱。
- 漫画でも読みながらお能を
- コロンブスの卵
- 金があればいいってわけじゃない。
- 短期的に回収できればいいは目標にすると、摩擦をつくる原因になる
文化の継承
- 伊勢神宮の式年遷宮がいい例
- 20年ごとの引越。継承。
- 作家と編集者
- ビジネスライク?
- 海外には編集者という仕組みはない
- 例えばアメリカなら、マーベル。商業誌がベース。
- ヨーロッパは、本を売るというバンドかな
日本人は枠をつくるのが好き
- 枠からアウトローができて、また枠ができての繰り返し
- 家元 vs 反家元
- わくから飛び出して、摩擦をつくって想像力を増す
- さらにそれをよしとしない
- 健康的な摩擦をつくりつづける。体の代謝とおなじ。
- 鱗模様より
- 正と悪は表裏一体
宗家さんのお話
- 宝生さんが好きなのは感情の起伏が激しい演目らしい
- 震災。能楽は無力?
- 舞台の中でどれだけ魅力を伝えることができるか
- 宝生流は?何もしないよねといわれた歴史
- 地味?
- 写実的。バリエーションが豊富。活かしたい。
- 派手な動きをおさえて、静寂な空間をつくれたら
- 宝生流はどうする?
- 金剛流の若宗家と若手の視点のお話
質問コーナー
- 私も質問しました!
型は、実は10年もすれば変化する
- 老人っぽいというのも人気だったとき
- 何もしないというのが時流のとき。結果、何も得るものはなかった。
- 自分の体に合理性がある
- 例:ロッテのコーチの小谷 正勝さん
- 体の使い方にはまずは指導に力が必要
- 今までみたいに型というより、
- 体の使い方を見ていくというのを実践したい
- センス+放任主義。自分が美しいと思う物はなんだろう。
- 放任するが、フィードバックしないとプロじゃない
- デザイナさんであれば、全体から見る。書くことより見る。
- 世阿弥もいっていたけど
- 呼吸のキャッチボールもみえてくる
- 舞台上でのやりとり。
私の質問:初心者・初学者にどうやって広めていけばいいか?どう用意する予定があるか?
- 教えてほしいですと冗談交じりに言われました
- その上で
- 文学の多面性。という視点があるといいのではい。
- ワンクッションも必要
- ニーズにあわせてコンテンツ
- ノープラスワン -> 能+1 をはじめた
- 月並能に特別企画をプラスワン!2016年、月並能プレイベント「能+1」が始まります。 | 公益社団法人 宝生会
- 100%能を見せることだけ、をしない道
- (すなおに、すごいなーと思った)
- 一般の人にも経緯を能楽師だけじゃない、伝道師は
- 古いというのはふところが広い
- いろんなこといっても、お能だから大丈夫というところがある
- 読み物、意外とないですよね
公演後にグッズを買いました
- 今回の講演のきっかけになった主催者さんが即売会をやっていたのでトートバックを購入
- 博物館行くときに使っているのでぶら下げていたら私です
- 絵師の時松はるなさんは、国立能楽堂の主催講演予定表の挿絵も描かれているかたです
- ネットでは売り切れの卓上カレンダーもそえていただきました
おわりに
刀剣乱舞きっかけで、能楽にはまり中の私ですが、時代が能においついたと感じる1日でした。
伝道者は、能楽師だけではない、というメッセージは初学者である私が今後、
いろんな人に能っていいなをこのブログやTwitterで伝えていく一人でありたいなと感じます。
私の持論として、 刀剣乱舞はブームではない 、と思っています。
その核心を持って、ゲームにはまり刀剣と能楽の世界にはまっております。
この流れはずっと続くと思っていますし、私もこの場で何か残すことができればと思っております。