新江戸川公園の松聲閣で開催された新江戸川公園「刀剣・武具講座」に参加してきました。
その中の、「一流研師による研磨工程の解説と実演に」を受講してきたのでそのレポートです。
一言レポート
新江戸川公園「松聲閣」で「一流研師による研磨工程の解説と実演」の講座に参加してきた。めちゃくちゃ濃かった。SNSは周囲配慮でOKだが、普段は人に見せない秘伝に近い作業を行程段階に合わせて披露して下さり勉強になった。#とうらぶ男子 pic.twitter.com/nd7Ef93vVE
— ないな (@poponainai) September 19, 2016
まとめ
- 刀剣は研ぎがあってはじめて完成する
- 講義を通じて刀剣の奥深い世界を垣間見た
- 研ぎの実演を目の前で見ながら質問をすることができる大変貴重な機会を頂いた
新江戸川公園「刀剣・武具講座」とは
文京区・「刀剣乱舞-ONLINE-」コラボレーションの企画の一つです。
刀剣鑑賞で和泉守兼定を手に持ったり、押形を作ったりと珍しい講座が用意されていました。
私はその中の「研ぎ」に注目して、受講してきました。
「一流研師による研磨工程の解説と実演」
早速、レポートです。
受付後、参加証を首にかけて待機後、着席。
簡単な自己紹介を交えた講義を聞きます。
その後、和室の部屋に通されて質問交えながら実演を拝見することができました。
以下、そのときの詳細なレポートになります。
講義
- 9月19日(月曜日・祝) 14:00開始
- 講師:阿部一紀・本阿彌雅夫・小野敬博・森井鐵太郞・阿部聡一郎
- 今日はお一人来れず。刀匠さんの河内一平さんが来ていた。
- 写真撮影、SNSは周りに配慮すればOK
本阿弥家の歴史と研ぎ
- 阿部一紀さんが講師
- PowerPointで講義開始
- 本家は定説のとおりで途中までだが、分家は残っている。主な家系図を見せてもらう
- 加えて現在の家系図も
- 鉄の歴史
- 金属とは酸化物。酸化鉄。
- 鉄は5000年前から世界で使われ始めた
- 銅はその後 ... 日本は遅い。2500年ほど前から。
- 日本は銅が入る歴史が遅い(すぐに鉄になったから)ので銅製品の残存が数少ない
- 高い温度が必要
鉄と鋼の歴史
- 鋼の炭素量が低いと折れやすい(やわらかい)
- 海外製の剣は炭素量が多いので折れにくいが切れ味が悪い
- 炭素量0.0.3 ~ 2%が銑鉄 ... 鉄瓶とかで使われる。溶けやすいので加工しやすい。
- 0.3% ~ 0.7%が日本刀 で使われる ... 全体に比べると炭素量は低い
- 包丁は1.2~1.3%が目安 ... 打撃性が問われなくなる。日本刀はこの中間。
- 包丁は、鋼を鉄ではさむ
- 短刀は心鉄(しんがね)がないこともある(丸鍛え)
- 中身が出るとダメになるので薄さを求めるときの話
- なお、刀剣の刃は心鉄といっても、ほんのちょっと皮鉄から出ているだけ
- 室町時代末期は、鋼が高価。粗悪な鉄を心鉄にして包んでいたことも
- 大量生産時代はそのような出来のものもある
- 失敗率が高いのが火入れ
- 気泡が入るときに泡が抜けやすいようにしておくと、コントロールしやすい
- 疑問:焼刃土にもその効果あるのかな
研ぎの種類の話
- 鉄の展示館さんで撮影OKな研ぎの流れのパネルを今回は参照しながら聞いた
- これの下地研ぎと仕上げ研ぎにあたる一連の話を教えてもらった
なんのために研ぐのか?
- 研ぎ師まかせの刀匠もいるがねと。
- 下地研ぎ
- 仕上げ研ぎ
- 地づや ... 刀の善し悪しを決める。硬さと薄さが決まる。
- しっとり、しゃきっと
刃文は研ぎ師がうまく出してあげる
- お化粧のぬぐいの話
刃どり
... これは、流派による。小野系がよくやる(刃文に沿って白く塗る)。- 角粉を使う方法は他の流派はやらない!
- 明治初期にはじまった。完成させた
- 昔の鏡の磨きの応用が研ぎ
- 鎬地の磨きは、鉄よりも固い金属で研ぐ
あとで、実演時の写真も載せるが、これの磨き棒にあたる。
これらの道具は最後の工程に差し掛かるので実演ではその手前まで。
質問コーナー
- 国宝クラスの古刀について
- 全体を研ぐのではなく少しずつつなおしているのではないか
- 部分的な研磨は可能なので
- さびの度合い
- 鉄のさびは中に入るので、20~50年とかなら厳しい
- 10年なら、きれいになる
- 研ぎの値段?
- 人によるけど、
一寸
が基本単位 - (1万円とか)
- 現代刀は硬いので研ぐのが大変なんだって
- 人によるけど、
- 刃文によってかかる時間
- 大きな違いはないが、直刃は気を使う、とのこと。まっすぐじゃないとだめなので。
実演
- 和室に移動。3人にわかれてそれぞれ違う研ぎを見せて頂いた
- 実演中は、質問も移動も自由
- 基本、秘伝。一瞬、ここはとらないでといったシーンも
- 感想:使用する石やそのタイミングは流派によるみたいだと感じた
- 内雲から、仕上げまでの作業を3人で分担披露
- 私は、仕上げ研ぎをメインにお話を聞いていた
下地研ぎ
ひたすら研磨。仕上がった刀剣に対して、ゴリゴリと削っていく。
質問してみた
- 樋の中はどうやって研ぐのですか?
- 樋の形にあわせて研ぎ石を用意して研ぐよ
- 鎬を削るのに気をつけていることはありますか?
- 平行にしなければいけないので、凹凸があってはいけない
下地研ぎは人口砥石が主流になってきた
ごりごり削っているときの研ぎ石。備水砥とか。
下地研ぎその2
ゴリゴリけずったあとは、指の腹に研ぎ石を乗せてじつと研ぐ。
二人目のかたの作業の様子。
ここは質問がもりあがっていたので、遠慮した。
仕上げ研ぎ
- 刃艶(はづや) ... 沸や匂でる
- 写真の実際のサイズは親指程度の大きさ。表と裏。
- この大きさに石をちぎっている状態
- 100均グッズのようなタッパーに細かく収納していた。使い分け。
- この仕上げの段階だと、サビ対策の水に研ぎ石を沈めて使っていた
- 刃文に2日。地鉄に2日。が目安とのこと
- 地艶(じづや)... 肌を出す
- これも、愛宕山の研石を使う。下の層からの採取のもの
- 刀から出た鉄の研ぎ汁で見極める
- 拭い(ぬぐい) ... 光沢作業
- 鹿の角の粉を水で溶いて
- 酸化鉄の粉を和紙に染み込ませて研ぐ工程もある
- 刃取り ... 表面加工(白く塗る)
- 刃にそって研ぎ石と指をあてるので、やっぱり怪我するみたい
作業途中の刃文
はじめは浮き出ていなかった刃文が浮かび上がってきたところまで見せてもらった
あまり研いでいないゾーンの肌も見せてもらう。
直刃なので刃文の違いは写真だとわかりづらい。
研ぎ柄
研ぐときに使わなくなった鞘を使っていた。調整に使っていた。
鎬研ぎ
ペンのような形の研ぎ。道具がある。表面をつぶす。
部屋を引っ越すと困るほど繊細な作業
- そもそも、普段と違う場所で作業しても目がなれない
- よって、今回はパフォーマンス気味
- 引っ越しをすると、半年〜1年立たないと目がなれない
- 一定の自然光のために南向きとは逆の北向きから光をいれることも(刀匠さんに聞いた)
- それだけ光が大事
おはなしより
- 刀匠さんより
- 研ぐまで刃文がどうなるかわからない
- こうなるといいな、こう出したいなというつもりで作り終わるが、完成は研いだあと
- お客さんのレベルが高かった。名刀や名砥を見せてもらう機会。お客さんに教えてもらった。
- どこまで研ぐのですか?→茎手前まで
- 作業途中になるとどうするのですか?
- 刀掛けにおさめたり、運ぶときは、油塗って打ち粉で油を絡めたり(ぽんぽんしてた)
さいごに
今まで疑問の塊でしかなかった砥ぎの工程を知ることができて楽しかったです。
現役それも一流のかたの作業工程を見れたのが貴重すぎて、終始興奮していました。
今回の機会を設けていただき、また参加することができて感謝感謝な日でした。