永青文庫「歌仙兼定登場」連携企画。
『プロダクトデザインの視点から切る、日本の刀剣』の講演を拝聴してきました。
そのレポートです。
一言レポート
六本木で「プロダクトデザインの視点から切る、日本の刀剣」の講演を拝聴。めちゃくちゃよかった。来て正解。末兼さんの噂の刀剣トークは初めてで楽しかった。当日スケッチで挑まれた山中さんの理解力がライブ感あってよすぎたコラボ#とうらぶ男子https://t.co/9A6TqUpu18 pic.twitter.com/U0A1vlTsLa
— ないな (@poponainai) 2016年9月30日
まとめ
- 歌仙さんをオルソスキャナーでとろうとするとなぜかきれいにとれない呪い
- 生駒光忠の刃文はオリジナルのそれに近い
- モノを見るというのは、とてもインタラクティブな活動という話に共感
永青文庫「歌仙兼定登場」連携企画 『プロダクトデザインの視点から切る、日本の刀剣』
2016年9月30日に六本木で連携企画が実施。
刀をプロダクト視点から語る画期的なトークセミナーでした。
司会は永青文庫の副館長の橋本麻里さん。
スピーカーもユニークな組み合わせ。
最近、刀剣界隈では有名な末兼俊彦さんとコラボするのがデザインエンジニア山中俊治さん。
あの、SUICAのタッチパネルシステムのデザインをした人と聞けばびっくりしますよね。
本人のブログにて。
山中俊治の「デザインの骨格」 » あらためてSuicaの話でもしようか その1
レポート
会場は六本木はアカデミーヒルズ。
六本木ヒルズ内の49階にあります。
それでは、だらっと時系列まとめです
オープニングトーク
- 自己紹介
- 橋本さん。最近いろいろやっているとのこと。書くのが本業。
- 山中さん。刀剣は素人。いろんな工業製品をデザインしてきた。
- 末兼さん。最近はキョーハクとトーハク兼任だよ。
- 末兼さんの代表の仕事
- キョーハクの刀剣の評判。8万人集まった話。
- 龍馬展も担当するよ
永青文庫と凸版印刷の共催
歌仙兼定登場の来館者数2万5000人
- 目標は、2万人だった
- 10/2で終演なのにこの時期のトークセミナーなのは、今回のお二人をあわせるため!
- 春画展は、21万人
- ただ、年間来場者数目安3万人の館である ... つら
歌仙兼定の呪いとオルソスキャナー
- オルソスキャナーの画像は確かに美しい
- 行平と光忠はきれいにとれたのに... 歌仙はとれなかった
- 何度かためしたが、もわれが出るとのこと
- 撮影をあきらめましたとさ
それぞれの専門性。10分ほどといって合計時間大幅オーバー。
かたちと機能と製造技術
- 山中さんより
- 今日、永青文庫に行ってきて実物を見てきたよ
- 工業製品の話、機械工学の話
- カーブ
- 自分がきれいだと思うカーブを書くだけじゃだめ
- 車なら鉄板の性質を知らないといい車ができない
- しならせたときのテンションのあるカーブとか、数学的にある
- 人体に接するものは人が大事。たとえば、いすのデザイン。
- 大学の展覧会のギャラリーで3Dプリンタやチタンの活用の話を濃くしてくれた
- 大根おろしでグッドデザインの金賞もらったりした
刀関係のお話に焦点をあててくださった話のまとめ
- 刀は、人がもったときの美しさを相当意識している
- カーブが大事
- 刀はにぎる、という観点ある
- 刀に初心者のための観点はない
- このあたりの近代のユーザビリティには必要ないとみている
- はじめて見た人がつかうわけじゃない
- 見た瞬間に使い方がわかること
人間工学の視点
- JRの改札のカードをかざす機械の角をあてる面
- 13.5度。全国共通。その角度を決めたよ。
- 光っていて、自分にむかっているものは、人は案外カードをあてるを発見した。
- 義足のデザイン
- 人工物としてかっこいいものをつくると自然なものになる
- 走っているときの足首はバネとしてしか機能していない
チタンは100年前のアルミニウムに似ている
- 高級とおもいきやありふれた金属。地上で9,10番目に多い。銅の100倍。
- 高いのは精錬にお金がかかる。
- チタンは軽い丈夫。人体に影響をあたえない。
- いすにすると、とてもいい。
末兼さんのお話
- 刀もってきたかったけど、ヒルズは禁止のようで
美術史 は 歴史学の一つ
モノ「から」歴史を語る ◎ モノ「の」歴史を語る ×
型式学と様式論
- 型式学
- 人工物に時間的・空間的に正確な秩序を与えることで分類する
- 例:はじき。釉薬をかけない。
- これが、お茶碗のひとかけがあったら、どの時代かわかる基礎データを持っている
- 様式論
- さっきより、ゆるい論。ざっくり。まるまる風
- ステレオタイプのイメージ程度
- 形態や表現形式と言った外形を通じて分析し、個人や集団、時代に特有の色や、構図などの使い方の相対を分類する手法
刀剣についての研究はまだまだこれから?
- この手の研究が金工の中でもあまり進んでいない(と聞いてて思った)
- ある程度の法則性はあるが、確固たる指針として分類できていない
- よって、科学的な技法から。ものから歴史を語る
- 例:鎧のCTスキャナ ... 鉄や皮とかの組み合わせがわかる
- 鉄、皮と交互にいれることで、軽量化と防御力をあわたと推測できる
- 江戸時代になると、戦闘しないしで全部皮とかもあるし
どうしてこの形?最終的な目的は形の始まりを見る
- 姿(forme)と文様・図様(pattern, desgin)
- 外形起源の一例としての姿(forme)
- 慶長新刀
- 時代じゃなくて、人を見る。
- 埋忠の太刀 明寿より
- 磨上た刀とそれをモデルにした刀が残っている
- この現存作より判断できる。
- これが大事
鎌倉時代末から南北朝時代の太刀を磨上げた形を模している 身幅が広く、反りはあさく、切先がのびる
- 30cm違うだけで一人で抜けない太刀
- 磨上 ... 使いやすくするから短くした
- 幅が減らないから、幅が広く、となる。みためがずんぐりする。
- そらすのは難しい
- ふさらせる ... 簡単。短くして、ふさがせる。
- 棟側のほうが、金属が厚い
- 刃側は、金属の限界。たたいて戻せるが、さらに反らせるのは無理。刃切れが起きる。
文様(pattern)の一例
- 刃取 ... 例のお化粧
- 刃艶、ぬぐい
- 磨りガラスの原理で光らせる
- 刀の地金を肌というのは、お肌。メイク。
テーマ1:プロダクトの視点で刀剣を鑑賞
- 永青文庫でスケッチした山中さんの画像よりお話が盛り上がる
- 山中さんが実物を見て、スケッチした疑問をぶつけて末兼さんが答えるスタイル
- 円運動と刀剣の関係
- 昔はのこぎりの原理で切るとみられていた
- 拡大するとギザギザな箇所があるので鉄より柔らかいモノは食い込めば切れる
- とおもわれていたが
- くさび効果?と10数年前からみられはじめた
- カーブをうんでいると、見せかけの侵入角が鋭角になる
- みせかけの角度がかわる!!!
- 切る瞬間の角度がかわることで、鋭角になる。
- 手元と先端で機能が違うということ
- 原理。扇風機 ... 竹とんぼなど根元と先端のスピードの違い
- 先端がよりシャープになっていくというのが、切ることの性能特化。
- 切るということ
- 鎌倉は腰元で反るのは馬上の円運動
- 江戸時代は地上の手で振るので、先ぞりになる
- カーブよりまっすぐのほうが距離が長くなるということで突き。17世紀の終わり。
- カーブは意図してつくったの?
- 焼き入れをすると、ゆがみ(ひずみがいろんな方向にうまれる)がうまれる
- 刀匠が、時代、用途ごとにたたいて設計している
- 美的観点で決めることもある
- プロダクツとして見た場合、生産者より、大名とか貴族とか依頼者の要望が高くなる
- お金を出す側の声が強い。今も昔も。
- 歌仙兼定の拵と鐔の話
- スケッチですかし鐔に注目
- 細い理由とは?
- つばは、手をガードするわけじゃ無い
- 自分の手を、間違えて切らないようにしているので、細くてもいい
- 限界まで細くしているデザインの透かし鐔となる
- 柄巻き
- 二枚の板をはさむ。のりだけだと、割れる。結合面が、刀の動きといっしょだから。
- よって、側面を糸で巻く。強化する。
- 鮫は高い。よって見せない側に巻いた後が残ることも
- 目貫と目釘穴
- 円錐型をしている。竹の釘。
- 目釘穴と目貫いっしょだった時代があったが、飾りになった
- 位置がずれている
- 武蔵拵の実用性
- バットのグリップみたいになっている
- 小指の当たる側。弾き手側が大事。
- 輪鼓(りゆうご) をとる ... 中央がへこんでいる。実践型な点に注目。
軍刀は刀の形をした刃物
- 量産品?粗悪等?
- 二種類ある
- 大戦末期は、金属自体がね。
- 実践用だったので、マイナス20度とかの土地だと一発でだめ。それを改良して使えるようにした時代
- 本当の意味で実用品として作られた。制作方法も違う。
- 焼き入れは、水でやってたものを油でやるとかしていたことも
- 飛行機乗りも持っていた魂のあり方
オルソスキャナーの写真をみながら
- 刀は長いので、頭とおしりの焦点があわない
- 望遠で撮ると撮れるが、空気や距離やら出来ない
- そこで今回の技術。すごい近くでとっているけど遠くからとったように見える。
- 生駒光忠
- 茎の金象嵌が美しくとれる
- お化粧は?オリジナルに近い刃文。中にある黒いのが本来の刃文。
- 豊後国行平
- 根元の部分が一部黒い
- 柄からちょっと出たところは焼きを入れない
- これを、焼きおとし
- まがってもおれない。これが継承されていない新刀は折れる
- やきおとしがあれば、時代を推測できる。
- 新刀は磨上を参考にしているから焼きおとしを知らずに継承した可能性あり
- 使わない時代があると、伝承されない
- プロダクトデザインの世界でもあるある
- 例:伝統的な様式美(ティーセットとか)は、機能美が最高でも使い勝手が様式違うとだめとか
テーマ2:未来の展示はデジタルでどう変わる?
- 形の話から物語りの話へ
- VR ... 東京オリンピックでの活用
- 非言語化による多言語化。つまり、ビジュアルで説明できないなら
- 言葉に頼らずに、映像や音で見せる
- という、映像コンテンツをつくったらどうか。
- 組み立て工程とか。
- 3Dプリンタの可能性
- 今、みなさんは3Dプリンタで作ったモノを持っているわけではない
- 今あるものを置き換えてってのはまだまだ。
- 日本刀で残念なのは、真横がみれない。
- 行平はみることができた。
- モノを見るというのは、とてもインタラクティブな活動
- トータルの情報でひとつのものを理解する
- 彫刻も、いろんな向きからみることでそうかとなる
- 勝手に回してくれてもだめ。自分でものをまわす。そこまでいって、実体験。
質問はひとつだけ
- 歌仙兼定のその写真を見せてください
- 何がうつっていないのか?
- 地鉄がうつるはずが、強烈なもわれが出ている。
- ブロックノイズ。拡大にたえられない。
- 本来、うつらないものがうつる。白いのがでている。
おわりに
行ってよかった!今回は本当に行くべき内容でした。
これで、もう一回永青文庫で刀剣を見に行く予定ですが、はかどります。